フローリングの塗装は、大きく分けると浸透系とコーティング系の2種類に分類されます。浸透系塗装は、オイルフィニッシュやハードワックスオイルなど、主に亜麻仁油などの自然素材を主原料とした塗装仕上げを指し、オイル塗装・自然塗装とも呼ばれます。コーティング系塗装は、ウレタン塗装やUV塗装などを指します。
お客様の中には、オイルは自然系。ウレタンやUVは石油系。どちらも効果や用途は同じで、原材料が違うだけという勘違いをされている方もいらっしゃいます。
衣類でいうと、コットン100%と化学繊維100%と素材に違いがあっても、遠目には違いが分からず、また用途も同じです。オイル塗装とウレタン塗装の違いも、衣類の例と同じととらえる方がいらっしゃるのです。
しかし、オイル塗装とウレタン塗装は別物です。フローリングを保護するという目的は同じですが、その保護プロセスはまったく異なっています。
ときとして同じように扱われるオイル塗装とウレタン塗装。ここではそれぞれに分けて、その性質をご説明します。
オイル塗装
ナチュラルオイルは木目の自然な美しさを引き出し、木の自然な色合いを深めます。亜麻仁油などのナチュラルオイルをエステル化した塗料が木に含浸し、硬化することで、木部への汚れの浸透や乾燥、ひび割れを防ぎます。一方、フローリングの表面に保護膜を形成しないため、汚れやすく、特に水気に弱く輪ジミなどの汚れがつきやすいという欠点があります。
ハードワックスオイル仕上げの床は、ナチュラルオイルと同じ特徴を持っていますが、吸水性が低く天然ワックスの粘度が高いため、フローリングの表面にハードワックスオイルが留まり、天然ワックスの保護層を形成します。
これらのオイル塗装のフローリングは、美しさを保つために定期的なメンテナンスを必要とします。メンテナンスはDIYでも可能ですが、いくつか注意が必要です。オイルの乾燥には多くの時間(完全に硬化するまでは30日ほど)を必要とし、塗布後には必ず拭き上げが必要です。拭き上げずに塗布したまま放置すると色ムラになるだけでなく、いつまで経っても乾燥せずにベタベタし、乾燥したとしても表面がピカピカになります(※ただしハードワックスオイルの場合は、塗布したら拭き取らずに放置してそのまま乾燥させます)。塗装や拭き取りに使用したウエス等は自然発火の危険性があるので、適切に処分する必要があります。また、これらのオイルには化学物質過敏症やシックハウス症候群の原因とされるVOCを多く含んでいます。頭痛や、めまい、アレルギー症状といった健康への影響も懸念されます。主成分が天然素材だからといって必ずしも健康に影響がない訳ではないので、注意してください。
ウレタン塗装
現場塗装では、低VOCで臭いもほとんどなく、耐久性にもすぐれているため、水性ウレタン塗料が人気です。フローリングの表面に強固な塗膜を形成するため、フローリング本体に傷や汚れが付着するリスクが低減します。普段はマイクロファイバーモップで乾拭きし、週に1回程度水拭き(クリーナー拭き)を行います。そして数年に1回、ウレタン塗料をリコートすることで、フローリングを新築当初の美しさに復元することができます。
ウレタン塗装はDIYで行うことも可能ですが、木の素地から塗布する場合は3回以上塗布する必要があり、またムラなく均一に塗布するには技術も必要です。そのため、一般的にはプロに依頼することがほとんどで、費用がかかります。選択する塗料によっても金額は変わりますが、オイルをDIYで塗布することと比較すると、大きな金額が必要となるでしょう。
塗布後の塗料が完全に硬化するまで早いもので3日間、長いものだと2週間程度要するため、工場塗装には不向きです。
そのため、新品のフローリングで使用されることはほとんどありません。
昔はウレタン塗装するとピカピカに仕上がると言われてきましたが、近年はまったく光沢のないものや、木の素地の触感を再現するような塗料も販売されています。また、ウレタン塗料は環境や健康によくないと言われる方もいらっしゃいますが、天然由来成分やリサイクル原料から作られているものもあり、一概に環境や健康に悪影響というわけではありません。
UV塗装
ウレタン塗装と同じものとして扱われることが多いUV塗装ですが、強力な紫外線を照射することで一気に硬化させる紫外線硬化型樹脂塗料を使用した塗装で、ウレタン塗装とはまったく異なります。一般住宅で使用される家庭用の木質系フロアのほとんどは、UV塗装で仕上げられています。昔はエポキシ系やウレタン系のUV樹脂もフローリングの仕上剤として使用されていましたが、現在はほとんどがポリエステルアクリレート(複数のエステル結合を含む化合物、ポリエステルポリオールにアクリル基を付加させたオリゴマー)が使用されており、最も耐久性にすぐれた塗装と言えます。また、強力な紫外線を照射すると100%硬化しますので、乾燥時間を考慮する必要がないため、工場での塗装の多くはUV塗装だと言ってもいいでしょう。
また、硬化した塗膜からVOCの揮発がありませんので、フローリング本体からの健康被害も考慮する必要がありません。
ウレタン塗装と同様に、UV塗装イコールつるつる、ピカピカというイメージをお持ちの方が多くいらっしゃいますが、こちらもまったく光沢のないものや、木の素地の触感を再現するような塗装もあります。近年好まれているつや消し仕上げも可能です。
UVオイルという仕上げも最近出てきましたが、こちらは厳密にはオイルではありません。紫外線硬化樹脂を含み、UV塗装だがオイル仕上げのように見えるという理解が正しいと思います。
結局、どれがいいの?
どれを選んでいいかわからないという方には、UV塗装を強くお勧めします。ただしUV塗装を選択する際には、塗装感のない全つや消しが好みなのか、塗装感のあるツルツルが好みなのか、自分の好みをしっかりと伝える必要があります。オイル塗装は、「どうしても自分でオイルを塗ってメンテナンスしたい」というお客様以外は、お勧めしません。オイル塗装は必ずメンテナンスを必要とし、そのメンテナンスは、万人にやさしいものではありません。メンテナンスに時間とコストをかける覚悟のあるお客様以外には、不向きな仕上げだと思います。
近年登場したUVオイル塗装は、その後のメンテナンスでオイルを塗布できないことが多く、「DIYで自分でオイルを塗ってメンテナンスしたい」というお客様には不向きです。ほとんどのUVオイル塗装仕上げは、その後のメンテナンスに水性ウレタン塗料を塗布することが多いので、注意してください。
土足で使用される場合は、絶対にUV塗装がおススメです。塗料に微粉末セラミックを配合することで、耐傷性や耐摩耗性を向上させることも可能です。
汚れてもかんたんに落とせる方が良いという方にも、UV塗装をお勧めします。
「UV塗装では自然な風合いがでない」「完全なつや消しがいいからオイル塗装を」とおっしゃる方にもお会いしますが、UV塗装のところでも述べた通り、最近のUV塗装には、オイル塗装と仕上げが見分けがつかないくらい完全なつや消し塗装ができるものもあります。弊社ではウルトラマットと呼んでいますが、実際に仕上がったフローリングを見ても、オイルかUVか判断つかないくらい、自然な風合いに仕上がっています。
実際に塗装による仕上がりの違いを写真で確認してみましょう。
どちらがUV塗装でどちらがオイル塗装か、判別つくでしょうか?
答えはわかったでしょうか?
左(スマホでは上)がオイル塗装、右(スマホでは下)がUV塗装です。写真で見てもわからないですよね。手で触ればすぐにわかる、と言われる方もいらっしゃいますが、弊社のフローリングはすべてブラシ加工していますので、木目が際立ち、表面には微細な凹凸があります。ウルトラマットなUV塗装は、手で触れるとほんのりわかる程度の微細な凹凸を作るため、手触り感も本物の木とほとんど変わりません。
では、こちらの写真はどうでしょうか?
これはどちらもUV塗装です。カラー名はノルディックナチュラル。Bona Raw UVという最新のUV塗装システムで仕上げられ、どの角度から見てもまったく光沢がありません。
完璧にみえるUV塗装にも、欠点があります。それは現場塗装には向かないという点です。
そのため、フローリングをリノベーションする際の選択肢は、ほぼオイル塗装かウレタン塗装に限定されます。UV塗装ほどではないにしろ、ウレタン塗装も強固な塗膜を形成し、フローリングを強力に保護しますので、リノベーションの際にメンテナンスの手間を省きたい方はウレタン塗装がベストな選択となるでしょう。
まとめ
ここまでの説明をまとめると、以下の表のようになります。
オイル塗装 | ウレタン塗装 | UV塗装 | |
---|---|---|---|
塗膜の強度 | |||
メンテナンスの手間 | |||
健康への影響(VOC) | |||
フローリングの見た目 | つや消し・自然 | ツヤあり~つや消し ピカピカの仕上げからつや消しまで選択可能 | ツヤあり~つや消し ピカピカの仕上げからつや消しまで選択可能 |
新築時の選択肢 | |||
リノベーション時の選択肢 |
UV塗装を強力に推す結論になってしまいましたが、弊社ではどんな塗装にも対応可能です。ウレタン塗装やUV塗装でも仕上がりの光沢を選ぶこともできます。すべて自社施工ですので、何でもお気軽にお問い合わせください。